西郷隆盛

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海音寺潮五郎氏の西郷隆盛(朝日新聞社 新装版)を読了した。
鹿児島出身で、西南戦争に従軍した経験を持つ人が回りに多くいた
環境で育った氏にとって西郷隆盛は特別な存在なのだろう。
西郷を取り上げた氏の作品は多いが、
今回の新装版はまさに集大成というべき重厚なものだった。

この作品は史伝という形をとっている。
小説のように創作を交えず、資料である書簡や公文書、日記が
現代語訳されてはいるが、そのまま記載されている。
難解にはなるものの、人柄や微妙な状況を知ることができ、
その時代を生きた西郷や大久保らの肉声を聞く思いがする。

だが3巻など、西郷は遠島に処せられてほとんど登場しない。
小説、あるいは伝記ならば島での西郷の生活を描くだろう。
だが今作では京都や江戸での政治のかけひき、
久光や大久保の薩摩側の働きかけを描く。
無関係のように思えるが、それらがすべて行き詰まり、
西郷が召還されて再登場することで、歴史は再び流れ出す。
まったく明治維新とは西郷なくしては語れず、
西郷の人生は維新そのものだったのだ。

惜しむらくは、9巻、彰義隊討伐が終了した時点で、
今作が終了していることである。
作者逝去といういかんともしがたい理由ではあるが、
叶うことならば城山の最後までを氏の筆で読みたかった。
小説である「敬天愛人 西郷隆盛」も同じあたりで終わっていたり、
「真田幸村」では武田家滅亡後の北条と徳川の戦で終わっている。
「武将列伝」でも『信長の生涯の事業を叙して三分の一にも
達しないうちに、早や枚数が残り少なくなった』と総括に入っている。
序盤から人生のハイライトまでを描くことが
氏のクセと言えない事もないが、読者としては最後までを読みたいものだ。
あるいは氏からの宿題なのだろうか。


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このページは、が2008年5月 7日 15:41に書いたブログ記事です。

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